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ノーベル賞の選考過程は50年間ブラックボックス

サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第一回】

アインシュタインが長年ノーベル賞をとれなかった理由

アインシュタインは相対性理論が理解されなかった

 知っていましたか? じつはノーベル賞の具体的な選考過程って50年間秘密なんです。ここがタイムや得点といった明確な基準があって競い合い、結果がはっきりとしているオリンピックなどとは違う所。ノーベル賞ではどうして自分が選ばれたのか、どうして自分が選ばれなかったのか、というのは50年たたないと分からないんです。

 逆に言えば、50年たてばアインシュタインがどうして長年受賞できなかったのかという理由も分かる。アインシュタインは1921年度のノーベル物理学賞をとっているんですが、彼は何年間も候補になっているにもかかわらず、受賞できないという状態が続いていたんです。

 というのも、アインシュタインの相対性理論を理解できなかった物理学者が選考委員の中に居てその人が反対し続けたんです。それでノーベル賞の選考委員会も困ってしまっていて。要するにいまの村上春樹みたいなもので、大人気なのにとれない。それが何年も続いたので一計を案じて、相対性理論ではなくて、アインシュタインが書いた別の論文、量子論でとらせようとしたんです。

 しかし、アインシュタイン本人は、量子論は完璧な理論ではないと終生言い続けていました。完璧な理論である相対性理論ではなく、満足いく内容ではなかった量子論の業績でノーベル賞をとった。非常に皮肉な受賞だったわけです。過去のノーベル賞の事例を振り返るといろいろなことが見えてきます。

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竹内 薫

たけうち かおる


 



1960年、東京生まれ。サイエンス作家。東京大学卒。マギル大学大学院博士課程修了。理学博士。「サイエンスZERO」(NHK Eテレ)のナビゲーターも務める 。

 


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